◯悠人の部屋、夕方
紗代は壁掛け時計を見上げる

紗代(悠人が戻ってきたら帰ろう。悠人のおかげでだいぶ楽になったし。)

ベッドの近くに置かれたカバンを開ける
カバンの中を手で確認する①
→鍵を探している

紗代(ん?)

カバンの中を両手で確認する②
→鍵を探している

紗代(え?)

カバンの中を両手で確認する③
→鍵を探している
カバンの中を覗き込む

紗代(嘘でしょ!?)

カバンをひっくり返す
カバンの中身が床に散らばる
放心状態になる紗代

紗代(鍵忘れたぁぁぁぁ!)

白目になる紗代

〇悠人の部屋、外は暗くなり始めている
玄関の開く音がして悠人が帰ってくる
コンビニの袋を持っている

紗代「悠人ぉぉぉ!」
悠人「な、なんだよ……」

紗代は床に座り込んで半泣き、目が潤んでいる
悠人はギョッとして紗代を見る

紗代「もう少しだけここにいてもいい?」
悠人「ぉ?」

悠人には紗代が子猫に見えてしまう
ちょっとだけ照れる悠人

紗代「鍵、忘れてきちゃったの……」
悠人「ださ。」

悠人の顔が一瞬でヤンキーの顔になる
しゅんとしている紗代の頭に何本もの矢が刺さる

紗代「ゔぅ……」

何も言い返せない紗代
早退後、悠人がいなかった場合の想像をする

◯(紗代の想像)早退後、通学路、午前中
・学校から出た紗代は道端で倒れて魂が抜けていく
・人だかりができる
・救急車で運ばれる
・母が大慌てで帰宅「紗代ーーー!!」
(想像終了)

◯悠人の部屋、夜
紗代(悠人が助けてくれなかったら、酷いことになってた……)

どよーんとする紗代、床に正座している
悠人が紗代に近づいてコンビニの袋を差し出す

悠人「食うか?」

顔を上げる紗代
悠人から差し出された袋を覗き込む
袋の中にはみかんゼリーとプリンが入っている

紗代「みかんゼリーだぁ!」
悠人「まだ好きなのかよ。」
紗代「いいじゃん、べつに〜」

みかんゼリーを見て機嫌が急回復した紗代
悠人から袋を受け取ってみかんゼリーを取り出す
ゼリーの蓋を嬉しそうに開ける紗代
視線を感じて悠人の方を見る

紗代(どうしてそんな顔するのよ!)

悠人は優しく微笑んでいる
見守られていることに居心地の悪さを感じつつも、悠人が近くにいることは嬉しい紗代
小さくなってみかんゼリーを食べ始める
紗代は悠人の顔をチラリと見る

紗代「もう怒ってない?」

悠人もプリンを食べ始める

悠人「怒ってねーし。」
紗代(怒ってるよね〜)

紗代はみかんゼリーを黙々と食べる

悠人「お前に言われるとは思わなかった。」
紗代「昔から言ってたじゃん。」
悠人「そんなのには興味がない。俺は……」

悠人はプリンを食べて言葉を飲み込む
紗代からわざと視線を逸らす悠人
みかんゼリーを食べる紗代
・ ・ ・ !
空白の時間が3秒の後、ひらめく

紗代「あーーー!」
悠人「うるせーな。大声出すな。」

紗代(思い出した。私は大事な部分を忘れていた。悠人にモデルをやれだの芸能界行けだの言った後、悠人は必ず私に言っていた。)

◯(回想:第四話の回想シーンと同じ)中学時代の下校、土手、夕方
・土手を歩く2人、菜の花が咲いている
・悠人は学ラン、紗代は制服

紗代「悠人はモデルになったら?芸能界とかも行けると思うよ~」
悠人「ははは。何言ってんだよ。俺は……」

・中学生の悠人、爽やかでキラキラした笑顔を紗代に向ける

悠人「俺は獣医になりたいからさ。」

(回想終了)