◯学校を出てすぐの通学路、夕方
悠人に手を引っ張られながら歩く紗代
手を繋いでいるわけではなく、悠人が一方的に紗代の手を掴んでいる

紗代「ちょっと、悠人!」
悠人「宿題教えてやる。」
紗代「えっ、ほんと!?」

紗代は目を見開く
悠人が振り返る

悠人「お前には無理だろ?」
紗代「今日のやつ全然わからなかったの!やったー!」

紗代は両手を上げて喜ぶ
悠人は紗代を見て意味ありげに笑っている

◯悠人のアパート、夕方
先を歩く悠人についていく紗代
アパートの階段を上がる
部屋の鍵を開ける悠人

悠人「どうぞ。」
紗代「おじゃましま~す。」

悠人の部屋に入り、部屋を眺める紗代
前に来た時より綺麗になってる

紗代「掃除したの?すごいね。一人暮らしの部屋の掃除って大変でしょ?」
悠人「まーな。」

紗代は悠人の部屋を見て(自分の部屋を掃除しなきゃ)と考えている
悠人は紗代を部屋に呼ぶために掃除していた

悠人「数学だよな?」
紗代「その通りです……」

肩をすくませる紗代
カバンから教科書とノートを取り出してテーブル広げ、筆箱を置く

悠人「えっと、今日の宿題は……」

悠人の指導が開始
真剣モードになる紗代

〇悠人の指導を受ける紗代の様子
【今日の宿題は全く解ける気がしなかったけど、悠人はすごかった。】

・テキパキとやり方を話し続ける悠人を見てぽかんとする紗代
・混乱して頭を抱える紗代を見てゲラゲラ笑っている悠人
・「あーなるほど!」と大声で言ってしまい、悠人に「うるせーな」と言われる
・「ごめんごめん」と言いながら真面目にノートに書く紗代
・「これは、これを使うんでしょ?」と得意気に言う紗代を見て笑う悠人

【頭の中でこんがらがっていた糸が、するするとほどけていくようだった。】

最後の問題を書き終えた紗代

紗代「できたー!」
悠人「意外とわかってんじゃん。」
紗代「先生が素晴らしいからです。」
悠人「だろうな。」

満更でもない顔をする悠人
紗代は少し不貞腐れたような顔をする

紗代「休んでたから勉強できないと思ってたのに、なんか心配して損した。」
(この見た目で勉強ができるのはずるい。できるように見えないもん!失礼だけどさ!) 

悠人「お前が言ったんだろ?諦めるなって。」
紗代「私が言ったから勉強してるの!?」
悠人「……悪いかよ。」

悠人は照れながら顔を逸らす
紗代は悠人が自分の言葉で諦めずに勉強するようになったと知りドキドキするが、自分と悠人の能力の差を痛感して泣けてくる

紗代(どうしてこんな短期間で挽回できてしまうのよ!)
悠人「お前と一緒に卒業したいからな。」

紗代は内心嬉しい、ドキドキする
でも僻みのような言葉が口に出てしまう

紗代「あんなに休んでたからだめかもよ?」
悠人「それはへーき。」
紗代「なんでよ。」
悠人「学校に家庭の事情って言ってある。ま、特待だから大目に見てくれてんじゃねーの?この髪はやべーかもしんねーけど。」

悠人が華麗に髪をかき上げる
紗代にはその姿がスローモーションに見えている

悠人の周りがキラキラしてラメが飛び散る
悠人からイケメンオーラの風(強風)が吹いてきて紗代は目を閉じる、髪が揺れる
紗代は悠人の見た目と中身の完璧さに圧倒されてしまう

紗代(休むことが認められていることはまだ理解できる。でも金髪は校則違反だ。それに……!)

悠人に向かって叫ぶ紗代

紗代「特待生だなんて聞いてないよ!」
悠人「成績は良かったんだよね~こんなだけど。」

悠人はわざとらしく金髪を紗代に見せつける

紗代(あぁ悔しい。私は悠人に少しも及ばない。別に競っているわけじゃないけど、ヤンキーのくせにって思ってしまう。)

紗代はテーブルに伏せて泣き真似をしながらテーブルを右手の拳で叩きつける
悠人はソファーに座り、紗代を見下ろす

悠人「宿題は終わったのか?」
紗代「終わりましたー。」

紗代はひょこっと起き上がり、ロボットのように言う
テーブルの上に広げていた教科書、ノート、筆箱を雑にカバンに入れていく
カバンを持って立ち上がる

紗代「じゃあね、ありがとう、悠人。」

紗代はちょっとイラっとして帰ろうとする

悠人が紗代の腕を引き、カバンが落ちる
紗代は悠人に引っ張られてそのままバランスを崩してソファーに座る悠人の上に座ってしまう