◯校舎の外、下校の時間、夕方
下駄箱で靴に履き替えて校門へ向かう紗代
少し先に悠人が見えて、声をかけようとして足を踏み出すも立ち止まる
悠人の向かいに女の子(5組の花蓮)が立っているのが見える
紗代は慌てて柱の影に隠れる

紗代(5組の花蓮ちゃんだ……)

【花蓮ちゃんは学年で1、2を争う美少女。悠人と並ぶ姿はあまりにも絵になる。】

紗代(やっぱり悠人にはかわいい子の方が似合うよな……)

華やかな花蓮と悠人のカップルの姿(結婚式)を想像する紗代

紗代(って何考えてるんだろ……)

自分で想像しておいて苦しくなる紗代
柱に寄りかかってしゃがみ込む
胸の前で手を握りしめる
ぎゅっと目を瞑る
ちょっとだけ声が聞こえてくる(はっきりとは聞こえないけれど)

紗代の背中越しに悠人と花蓮の姿がある
風がザザザと吹く

悠人「うざ。」

悠人の声が聞こえた後、花蓮が走り去る足音が聞こえる
紗代は目を開けてほっとする

悠人「覗き見か?」

紗代が驚いて振り返ると、悠人が気怠げに紗代を覗き込んでいる
内心では告白を断ってくれて嬉しいと思っているものの、断り方が酷いのではないかと思ってしまう
紗代はゆっくり立ち上がる

紗代「あの、もうちょっと優しく言ってあげてもいいんじゃない?断るにしても、もうちょっと優しく言うとかさ。」

悠人には誰とも付き合って欲しくないという無意識の願望があるのに良い人ぶってしまう
視線を彷徨わせる

悠人「なに?優しくされてーの?」

悠人に壁(肘)ドンされる紗代
距離が近いことに驚く
紗代は悠人の顔を見ることができず、視線を逸らす

紗代「そ、それは……そうだよ。優しくされたいよ。」
悠人「ふーん。」

紗代は視線だけをチラと悠人に向ける
悠人はニヤリと笑い、紗代の腕を掴む

紗代「え、なに?」
悠人「帰るぞ。」

紗代は悠人に引きずられるようにして学校を出ていく