◯教室、紗代のクラス、朝
【あれからしばらく経ったある日──】(2週間後くらい)

教室の後ろの扉がガラガラと勢いよく開く
金髪ヤンキーの悠人が教室に入ってくる
教室がザワザワする

教室の中に鋭い視線を向ける悠人
紗代の隣の席にカバンを乱雑に置く
椅子にどかりと腰掛ける

紗代は悠人の姿を見て笑う

紗代「珍しいね。」
悠人「うるせー。」

悠人は紗代の方を向かずに答える
紗代は悠人を見ながらニコニコと笑っている

紗代(もう怖くない。金髪のヤンキーは悠人だから。)

◯教室、休み時間
【悠人には相変わらず取り巻きがいて、】

悠人の席に集まるヤンキー5人
紗代(前より増えてる……)
悠人に向かって頭を下げているヤンキーたち
紗代は以前より近くでその様子を見ている

◯教室、授業中
【喧嘩の噂も聞くけれど、】

授業中に悠人を見る紗代
悠人の手が傷だらけでギョッとする
悠人は紗代の視線に気づいてパンチの仕草をして笑う
紗代は眉間に皺を寄せる

【悠人に対するみんなの印象は変わっていった。】

黒板に書いていた先生が振り返る

先生「じゃ、この問題……悠人、解けるか?」
悠人「はい。」

悠人は黒板まで歩いていき、サラサラとチョークで答えを書く
教室の中がザワザワする

【悠人はどんな難解な問題もスラスラ解いてしまう。元々頭が良いことは知ってたけど、学校を休みまくってたからつまずいてもおかしくないのに、悠人には隙がなかった。】

紗代「話が違うよ……」

机に突っ伏して放心状態になる紗代
黒板から戻ってきた悠人が紗代に囁く

悠人「頑張れよ。」
紗代「はぁ……」

先生が黒板に問題を書く
「次、土田〜」という先生の声を聞いて、紗代はげんなりした顔で立ち上がる
悠人はそれを見て小さく吹き出す

◯体育館、体育の授業、午前中
バスケの試合をしている悠人とクラスメイトたち

【悠人はスポーツも万能だった。運動は得意じゃなかったはずなのに、ヤンキーになって体力が有り余っている悠人は、負け知らずだった。】

悠人が華麗にドリブルをする姿を見て、クラスメイトの女子たちから歓声が上がる
悠人がやたらとキラキラして見える
少女漫画のような雰囲気

【金髪のヤンキーなのに、キラキラしたイケメンオーラを放ち、黄色い歓声を受けていた。】

悠人が華麗にシュートを決めてキャーキャー言われているのを、紗代は他人事のように見ている
悠人は紗代だけを見ている

◯学校の廊下、昼
【当然悠人はモテはじめた。】

廊下で女子が噂話をしている
廊下を歩く紗代は噂話を耳にする

女A「今日の悠人くん見た?」
女B「見た!カッコよかった~!」

紗代は女子たちの前を通り過ぎる

【いろんな人から告白されているって聞くけど、悠人は振り続けているらしい。しかも辛辣な言葉を付け加えて。】

女C「2組の山下さん、神谷くんに告ったらしいよ。うざいって言われたって泣いてたって。」
女D「私もそれ聞いた!5組の斉藤さん、結構ひどいこと言われちゃったみたいでさ~」

悠人はカッコいいがやっぱりヤンキーなんだ、ヤンキーって怖いと話している
紗代は廊下を通り過ぎて教室に入っていく

◯教室、下校の時間、夕方
【悠人が人気になって嬉しいはずなのに、なぜか気分が晴れない。】

自分の席でノートや教科書をカバンに入れる紗代
少しだけ乱暴にカバンに筆箱を入れ、教室を出る

【私は自分の気持ちがよくわからなかった。】