「紗里奈、帰ろう?」

放課後、薫くんは保健室にいる私のところへやって来た。

「ごめんね、薫くん……」
「気にしないで。紗里奈の家は西の……西山口とかその辺り?」
「うん。薫くんは?」
「俺は東町だよ。」
「東町!?」」

私の家がある方向とは真逆だ。

「だったらいいよ。すごく遠くなっちゃうじゃん!」
「いいんだよ。俺は紗里奈のボディーガード。明日の朝、迎えにくるね!」

薫くんは私を家の近くまで送ると、その場から走り去った。


紗里奈の家から少し離れると、薫はピタリと足を止めた。

「あいつが噂の転校生か?」
「そうだよ。」
「へぇ。」

薫は暗闇に向かってぶつぶつと呟いた。