「なんであんたがここにいんのよ!」

緑のモヒカンは、さっきの場所にいたはずだ。満はジリジリとこちらに近づいてくる。逃げようとすると、薫くんに腕を掴まれた。

「薫くん!?」
「紗里奈、少し待ってて。こいつと話をするから。」

薫くんは満を見据えた。

「薫さん、早くそいつ渡してくださいよ。」
「紗里奈は渡さないよ。気が変わったんだ。」
「何言ってんすか。そんなんじゃ閃爆でやっていけねーっすよ?」

驚いて息が詰まった。薫くんが閃爆に行くということなのだろうか。

「薫くん、今の話って」


紗里奈の声が途中で途切れて、薫は慌てて振り返った。紗里奈は閃爆のヤンキーに担がれていた。

「話が違うだろ。」
「ははは、約束を破ったのはてめーだ。」

紗里奈は満の足元にドサリと落とされた。周りを見れば、いつの間にか閃爆の連中に囲まれていた。

「満、紗里奈を返してくれ。返してくれたら、俺は手を出さない。」
「はぁ?お前1人で何ができんの?仲間はみーんな、大和んとこだろ?」

薫は大きくため息をついた。そして学ランのボタンを外し、丁寧に袖を捲り上げた。

「……仕方ねぇな。話はこいつらを()ってからだ。」
「何言ってんだ。」

余裕をかましていた満だったが、数十秒後には手下たちがぐったりと横たわっていた。

「お前、なんなんだよ!」

満は奥歯を噛み締めて、薫を睨みつけた。そして思いついたかのように視線を落とすと、ニヤニヤと笑いながら床に横たわる紗里奈を見つめた。

「紗里奈から離れろ。」
「ふ、ははは!こいつは渡さねーよ!絶対にな!はははは。」

満は気味悪く笑いながら紗里奈のブラウスに手を伸ばした。

その瞬間、薫の横を矢のような物が通り抜けた。けたたましい音が聞こえて、顔を向けると吹き飛ばされた満が壁に体を打ちつけて床に倒れ込んでいた。

「大和……」
「久しぶりに使ったわ、この技。」

大和は上着を脱いで紗里奈の上にかけた。