「紗里奈、帰ろう?」
「うん。」

私は相変わらず薫くんと一緒に登下校していた。もう1人で大丈夫な気がするけれど、薫くんは頑なに私のボディーガードを続けてくれている。

学校を出てしばらくすると、ヤンキーがこちらに向かってきた。同じ高校の人だけど見たことがない人だった。ヤンキーは私をチラチラ見ながら薫くんに耳打ちした。

「紗里奈、ちょっと待ってて。」
「うん……」

薫くんはヤンキーと共に行ってしまった。ヒューヒューと風が吹いて途端に寒くなる。1人がこんなに心細いのかと思い知らされた。

「早く帰って来ないかなぁ……」

薫くんはなかなか戻って来ない。体も冷えてきた。足音がして、薫くんが戻って来たのかと思って振り返ると、そこには見知らぬヤンキーが3人立っていた。


「なぁ、ねーちゃん、烈蘭だろ?」
「烈蘭に女がいるって本当だったんだな。」
「俺たちと遊ばねーか?」

このヤンキーたちは烈蘭高校の生徒ではない。私は急いでその場から駆け出した。

背後からヤンキーたちの声が聞こえてくる。私は息を切らしながら懸命に走った。捕まったら何をされるかわからない。そんな恐怖と戦いながら必死で足を動かす。でも、すぐに体力の限界がきた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

もう走れない。息が切れて苦しい。肩で呼吸をしても足りずに、思わずその場に膝をついた。

でもこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。嫌だ、捕まりたくない……怖い……!私は頭を抱えてうずくまった。