二週間経ちました。
 体重は、最初に比べて二キロ落ちたの!
 やった! なんだか、筋肉が順調についたのか、体が軽いし、歩くのも苦しくなっくなってきた!
 頑張ったかいがあって、うれしい!

 でも、そこから試験勉強が始まって、ここ数日は、すっかり体重は横ばいになって減らなくなってしまった。

「大丈夫だよ。数値は変わらなくっても、体は引き締まってくるから。そのための運動だろう?」

 そう、ケイ君は言うけれども、大丈夫なのだろうか。
 心配だ。
 だって、あいかわらずワンピースは入らないし。
 このワンピース、魔法の力か何かで縮んでない?
 そんな疑いを持ちたくなるくらいには、やっぱり、くやしい。
 
 私は、カレンダーに付けた赤丸を見つめる。告白するって決めた日は、試験の後、夏休み直前の終業式の日。

 この日は、近所でお祭りがあるのだ。祐樹君がそのお祭りの手伝いで、お神輿を担ぐことになっているのは、お母さんに確認済み。
 だから、あのワンピを着てお祭りに行って、祐樹君に告白する。
 
 そのために、今、頑張っているのだ。

 ケイ君に、ながら勉強で運動してみたらって言われているから、教科書を見ながらスクワットをしてみているけれども……これ、まっったく集中できないんだけれども。
 ダメじゃない? これ。
 だって、勉強にも集中できないし、運動もやりにくいし。

「無理、これ、出来ない!」

 わたしは、ベッドに倒れ込む。
 無駄に足は疲れてだるい。
 覚えなきゃいけない歴史の年表が、全然覚えられない。

「うーん。確かに、集中力は欠くよな」

 人間の姿で椅子に座るケイ君が考え込んでいる。
 どうやら、諦めてはくれないようだ。

「あ、そうだ。ダンス! ダンスはどうだ?」
「え、ダンス?」
「そう。そうやって、体を動かすことで覚える暗記法があるんだ」

 そう言って、ケイ君が、わたしの手を取る。
 腰に手を回して、踊り出したのは、ワルツだ。

「え、わたし、そんなの踊ったことない」
「大丈夫だよ。ゆっくり俺に合わせて、ステップを踏めばいいいから」
「ワルツ……ケイ君、平安時代の装束なのに?」

 なんだかミスマッチで、私はクスクスと笑ってしまう。

「いいんだよ。どんな格好でも楽しく踊れば」

 いち、に、さん、いち、に、さん……ケイ君が、リズムを刻む。
 どこで覚えたのかは知らないが、とっても上手だ。
 ケイ君の足の動きに合わせて足を動かしていくと、だんだん慣れて楽しくなってくる。こんな風に踊れば、本物のお姫様になった気分だ。

「ほら、歴史の年表、覚えるんだろ?」
「えっと、そうだった……千六百年が……」
「何? その時代が?」

 耳元で、ケイ君の声が聞こえる。
 て、無理。
 ケイ君に手を握られて、腰に手を回されて、こんな状態で、覚えられるはずがない。

「待って、待って! 無理! 無理だから!」

 わたし、たぶん、ゆでだこみたいに真っ赤な顔していたと思う。
 だって、耳まで熱いもの。
 ケイ君から離れて、わたしは、顔を両手で隠してしゃがみ込む。
 はずい……
 
「ほら、まりあ?」
「いや、無理だから。これ」

 まだ、心臓がドキドキする。
 前から思っていたけれども、ケイ君て、ちょっと距離感が近すぎる気がする。
 やっぱり、人間ではなくって精霊だからだろうか?

 結局、わたしは、ながら勉強を諦めて、普通に椅子に座って暗記した。
 夜中まで集中して勉強していたら、見守っていたはずのケイ君は、いつの間にかハムスターの姿になって、消しゴムを枕にして机の上で眠っていた。
 ケイ君が来てから、わたしは、ずっとケイ君に振り回されっぱなしな気がする。
 こんなので、本当に大丈夫なのかな?
 チラリとわたしが見たのは、あのワンピ。
 まだ、着れないワンピを着れるようになるまで、頑張らなければ仕方ないのだ。
 一緒に頑張ってくれているケイ君のためにも。