そんな変な夢を見た翌朝、母と共に長男である炎慈の結婚式場へと向かった。

母は黒留、紫は祖母から引き継がれてきた振袖に袖を通して非常に不本意ながら兄の結婚式へと挑んだ。

母に着付けをしてもらい一番最初に準備を終えた紫は控室で1人ぼーっと他の親族達の到着を待っていた。

が、やはりというべきか次いで到着したのは次兄の蒼慈でお互い顔を合わすなり「ゲッ」と言って顔を歪めた。


「なに、お前だけ?母さんは?」
「知らない。炎慈達に挨拶に行ってるんじゃない?そっちこそお父さんはどうしたのよ」
「煙草」


そう言うと蒼慈は対面にどかりと腰を下ろす。


「お前、兄貴の嫁さんどんな人か知ってんの?」
「私が知るわけないでしょ。そっちこそ兄弟なんだから知らないの?」
「男同士でンな話するかよキチいだろーが」


タッグになって妹を虐めてくる事の多い兄弟が知らないのにこっちが知るわけねえだろと毒づきながら黙り込む。

顔を見るとむかつくので視線を逸らして窓の外を眺めていれば、何を思ったのか蒼慈が話しかけてきた。


「おい、ブスな面が更にブス化してんぞ」
「……」


ギロリと睨みつければ、にやにやと楽しげな表情を向けてきた。