土曜日の夜、湊が指定してきたのはイタリアンのレストランだった。

あまり気負いすぎるのもどうかと思ったのでお洒落着としてヘビロテしているワンピースにカーディガンを羽織って約束の時間に間に合うように店へ向かった。

5分前に店の前に着き辺りを見回していると、駐車場に停めてあった車から男性が降りてきて近付いてきた。


「日菜」


懐かしい声に心が弾む。


「こんばんは、湊くん」
「ん。少し早いが入るか」


こくりと頷き中に入り、名前を告げると個室へ案内された。

大衆向けではあるがお洒落な外観と内装も相まってよくデートで使われる店だと口コミで読んでから少し緊張はしたが、これはただの友人との食事だと言い聞かせて頭を切り替える。

店員からメニューを受け取った湊はこちらに向けてそれを開く。


「ディナーコースってのがあるな。個別で食べたいものがあればそれでもいいけど、どうする?」
「うーん…じゃあ、コース2人分頼んでシェアする?」
「じゃあそれで」