仮の交際を含めると半年ほどが経とうとしていた2月も半ば、その日は世にいう所のバレンタインデーで、例に漏れず日菜子も愛しの彼氏の為に得意でもないお菓子作りに奮闘していた。

買ったものも当然用意はしているが、せっかくならばと材料を買い込み、1月の終わり頃から仕事終わりに何度も挑戦していた。

苦労の甲斐あってかようやく納得のいく出来に仕上がったのだが、そこで初めてラッピングについてすっかり失念していたことに気付いた。


よりを戻してから初めてのバレンタインだ。
家にある洒落っ気のない皿で提供するのも味気なさすぎる。

チラリと時計を見れば湊との約束した時間まではまだ1時間ほどあった。


「んー…」


少し悩んだ結果、湊に買い物をしたいから外で会おうとの連絡を入れた。

すぐに了承の連絡が返ってきたので駅に併設されている百貨店で落ち合おうと追記をし、軽く身支度を整えて日菜子は家を出た。