【#5】



「着いた~!」

展望台に着くと、同じ班の柏木さんがはしゃいだ声を上げた。

今日は一年生全員参加の春遠足で、花山展望台へハイキングに来ている。

わたしは残念ながら初芽ちゃんと班が別れてしまったけど。

「あ~腹減った。弁当食おうぜ!」

同じ班になった森川くんがそう言って、背負っていたリュックを下ろして早速お弁当を食べる準備を始めた。

そしてみんなでシートを広げて準備をしていると、初芽ちゃん達の班も展望台に着いてこっちに歩いてくるのが見えた。

「初芽ちゃん達も一緒に食べようよ」

わたしが声をかけると他のメンバーも賛成してくれて、初芽ちゃん達の班も一緒にお弁当を食べることになった。

「うわ~苺花のお弁当可愛い!」

わたしのお弁当を見て、初芽ちゃんが声を上げた。

今日のお弁当は、うさぎのキャラクターのおにぎり。

料理好きなお母さんが張り切って作ってくれた力作。

最初は食べるのがもったいなく感じたけど、たくさん歩いてお腹が空いていたせいか、食べ始めたらあっという間に食べ終わった。

お弁当を食べ終えると、森川くんが

「さて、食後の運動するか」

そう言って速水くんと一緒に走り始めた。

遊びのはずなのに真剣な表情で走る森川くんから、目が離せない。

「はい、夏樹の勝ち~」

そして見事に森川くんが圧勝した。

「イェ~!」

森川くんがガッツポーズをして喜んでるその笑顔に、わたしまで思わず笑ってしまう。

(あ、まただ)

森川くんのことを見てると、なんか胸の奥がふわふわする。

「苺花!」

「……え!?」

突然大きな声で名前を呼ばれて、ビックリして視線を向けると、

「女子みんなで花いちもんめやろうって」

初芽ちゃんが言った。

「うん、わかった」

それから、みんなで遊んでいる間も、ふとした時に森川くんのことを目で追っているわたしがいた。

「苺花? どうしたの?」

初芽ちゃんに不思議そうに訊かれて、

「なんでもないよ!」

慌てて視線を戻す。

わたし、どうしたんだろう……。

なんでこんなに森川くんのことばかり気にしてるんだろう。