それから季節は巡り、わたしは中学3年生になって、ずっと同じクラスだった真柴とは別のクラスになった。

ホッとしたような、寂しいような……ちょっと複雑な気持ち。

だけど、これで真柴のこと好きな気持ちも忘れられるかなって思ってた。

なのに……。

ふとした時に、真柴の姿を探したり、目で追っている自分がいる。

真柴はもうわたしのこと好きじゃないんだから、好きでいたってしょうがないのに。

「……ちゃん。舞桜ちゃん!」

「え?」

突然大きな声で名前を呼ばれて慌てて顔を上げると、

「どうしたの? 具合悪い?」

芽衣ちゃんが心配そうにわたしの顔を覗きこんでいた。

「あ、ごめん大丈夫だよ」

「そう? ならいいけど。交換ノート、持って来たから渡そうと思って」

「あ、ありがと」

差し出された交換ノートを受け取ると、

「なんか悩みあるなら遠慮しないでここに書いてね」

芽衣ちゃんが優しい笑顔で言ってくれた。

悩みごと、か……。

恋愛相談なんて恥ずかしいけど、芽衣ちゃんの言葉に甘えてノートで相談してみようかな。

その日、家に帰るとわたしは自分の部屋で芽衣ちゃんとの交換ノートに今の気持ちを書いた。

『実は今、自分の気持ちがわからなくて。真柴のこと、もう好きじゃないって言ったけど、ホントはまだ気になってるんだ。でも、好きじゃないって言われたんだから諦めなくちゃいけないよね』

『そっか。でも、無理に諦めることないんじゃない? 自分の気持ちには素直でいいと思う』

自分の気持ちに素直に、か。

芽衣ちゃんが返してくれた言葉は、悩んでいたわたしの心を少し軽くしてくれた。

それから数日後の放課後。

帰り際にグラウンドを通ると、真柴が友達とサッカーをして遊んでいた。

体育の授業じゃないのに、みんな真剣になっている。

真柴も汗だくになって真剣な表情をしていて。

その姿を見た時――なぜか、胸の奥がギュッとしめつけられた。

悲しいような、泣きたいような、どこか懐かしいような。

なんて言葉にしたらいいのかわからない、何ともいえない不思議な感覚。

でも、なぜかその時わたしはこれが恋なんだと気づいた。

やっぱりわたしは―まだ真柴のことが好きなんだ。

この時から、わたしの2度目の片思いが始まった。