私が井上くんを推し始めたのは、6月の暮れだった。
定期テストの最終日。
HR後、英語のテストに備え、念入りに単語のチェックをする私に、後ろの席の井上くんが話しかけてきた。
「あのぉ、消しゴムの予備あったりしますか?」
「もしかして忘れちゃった?」
「そうなんです……」
井上くんと直接話したのはこれが初めてで、最初はなんてドジな子なんだろうと思った。
でも、テストの日に消しゴムを忘れるなんて流石に可哀想すぎると思い、私は同情から自身の消しゴムをちぎって、その片割れを手渡した。
「どうぞ」
「いいんですか?」
「うん。ないと大変だと思うから」
「……ありがとうございます!」
「!」
へにゃと笑った顔はまるで天使そのもので、今思えば、私はその一瞬にして彼に心奪われた。
それからだ。
気がついたら井上くんのことを目で追う日々が始まったのは。
(あ、井上くんだ)
朝、通学路で一人歩く彼を見つける。
それだけで1日が良い日になりそうな気がして胸が躍った。
最近、井上くんがいるクラスに登校することが私のささやかな癒やしになっている。
定期テストの最終日。
HR後、英語のテストに備え、念入りに単語のチェックをする私に、後ろの席の井上くんが話しかけてきた。
「あのぉ、消しゴムの予備あったりしますか?」
「もしかして忘れちゃった?」
「そうなんです……」
井上くんと直接話したのはこれが初めてで、最初はなんてドジな子なんだろうと思った。
でも、テストの日に消しゴムを忘れるなんて流石に可哀想すぎると思い、私は同情から自身の消しゴムをちぎって、その片割れを手渡した。
「どうぞ」
「いいんですか?」
「うん。ないと大変だと思うから」
「……ありがとうございます!」
「!」
へにゃと笑った顔はまるで天使そのもので、今思えば、私はその一瞬にして彼に心奪われた。
それからだ。
気がついたら井上くんのことを目で追う日々が始まったのは。
(あ、井上くんだ)
朝、通学路で一人歩く彼を見つける。
それだけで1日が良い日になりそうな気がして胸が躍った。
最近、井上くんがいるクラスに登校することが私のささやかな癒やしになっている。