宗介と美風と理央と明日香と多紀と数名のクラスメートは、放課後学校の近所の公園で待ち合わせをした。
全員は、一旦ぶらんこの前で、恋が行きそうな場所を話し合った。
図書館に居るという者も居れば、雑貨屋に居るんじゃないかという者も居たが、宗介は狐に変身する事ができる恋はそんな場所には居ない気がした。
意見はまとまらなかったが、そうして居ても仕方ないので、とりあえず手分けして探そう、という事になって、宗介達は、待ち合わせの約束をしてから公園を離れた。
しばらく宗介は駅前の通りの商店街を探していた。
前に恋が狐の姿で商店街を歩くのは楽しい、と言っていた事を思い出したからだ。
その時は人前で狐になっている事について叱ったが、こんな事になるなんて思っても見なかった。
─────もしもこのまま恋が帰ってこなかったら。
宗介は胸が締め付けられて苦しかった。
小さな店店が立ち並んでいる混み合った商店街は、人探しにはちっとも向かなかった。
道の下の方を動いていくものがあってハッとすると、ただの野良猫だったりして宗介はその度にがっかりした。
もうすぐ夕方になる。
宗介が商店街を探していると、ズボンのポケットから、ケータイが鳴った。
『もしもし上野くん?』
ケータイは理央からだった。
理央のいつもの明るいトーンに、小さな雑音が入っている。
「駒井、恋居た?」
『それがさ、本人から連絡があって』
宗介の顔がその場でパアッと明るくなったので、通りすがりの人が思わず宗介を見た。
「良かった。最低。あいつ。どこに居るって?」
『それがさ、博物館に行って、帰り道が分かんなくなってたらしいんだ。』
「は?」
『あの広告の博物館。』
あの広告の、と言うと。
宗介はその場で怒り笑いした。
『今日3日目でしょう。車も電車も使わなかったんだって。どうしてたんだろう?。当てずっぽうに歩いてたんだって。今電車で駅に向かってるって言ってた。』
「分かった。ありがとう、駒井。」
『探しに集まったみんなはどうする?解散していいの?』
「僕が迎えにいっとく。オーケー。みんな帰るように言っといて。ほんっと最低。」
『了解。』
ケータイを切ると、宗介は、自転車で猛ダッシュで駅への道を走った。