帰りのホームルーム後。

 教室で帰り支度をした恋が鞄を背負うと、その肩を宗介が叩いた。

 2人はいつも一緒に帰る。


「好意を突き詰めると、何になるか考えてみた。」


 歩きながら宗介が言った。



「お前について知ってる事と、喋ってる時の感じとか色々と。多分分解しきれないんだろうな。」

「割り切れないって、そう思う?」

「好意ってそういうものじゃないよ。それにどんどん積み重なって、強くなっていく。」



 廊下に出た恋は、さっき美風と話した事について、宗介に言った。

 宗介は顔をしかめた。


「あんだけ樋山に言うなって言ったのに。お前はなんでそううっかりしてるかな。」


 宗介ははそこで恋に対する小言を並べた。


「毎回言っても直さないし、忘れるし、気にしないし。付き合ってるって事を分かってない。お前はどうせ面倒くさがってるんだろ。」


 恋は萎縮して黙った。


「僕の気持ちなんか考えた事がなくて、そういう事ばっかして。彼女としての自覚がない。自分でどうなの、それ。考えろよ。」


 お説教をする宗介に相槌を打ちながら、恋は困った、と思った。



「樋山くんがそのつもりみたいなんだけど。」

「そのつもりって?」

「3人で……」

「嫌だよ。」



 宗介は恋を睨むと言った。



「僕とお前は付き合ってる。僕は僕たち2人以外はどうでも良いくらいに思ってるのに。それをなんで分からないんだよ。最低。」

「ごめん……」

「もう良い。樋山には僕から言う。お前はどうせ言わないんだから。ったく。」



 宗介は、それから帰り道中、ガミガミと小言を言って恋を叱り続けた。