傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


情緒が安定していない。

感情的な自分と理性的な自分が完全に分離してしまっている。

冷静な自分は必死に馬鹿な自分を叱るが、暴走した心を止めるにはあまりにも非力だった。


「ツナちゃん…」

「うるさい!私はツナちゃんじゃない!」


ああ、さっきこらえた言葉がどんどん口から出ていく。

覆水盆に返らず。

そんなことはよく分かっているのに、口は止まらなかった。


「愛って何よ!?どうして、どうして私に優しくできるの。私は何も知らない!生まれてこの方愛されなかったから!何も分からない!怖いのよ、全てが。分からない。優しくされると嬉しさ以上に恐ろしさが心を支配するの。こんな幸せなことが続いていいわけがない!」


するりとカーディガンが肩から落ちた。

皺だらけのTシャツと、袖から伸びる腕が露わになった。

瑠衣が息を呑むのが聞こえた。


「愛されるのが怖い気持ちがあなたに理解できる?自分すら愛すことができなかったから、私は自分を傷つけることしか知らないから、どうしたらいいのか何も分からない!」


瑠衣の肩からも手を離し、ベッドの上にうずくまって嗚咽する。

最悪だ、私は何に対して怒っているのだ。

行き場のない怒りを、絶望を、なぜ関係のない瑠衣にぶつけているのだろうか。

最低だ。