傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜



「答えてないよ。だって私テンパってたから。」


瑠衣の腕を乱暴に払い除ける。


「馬鹿だ、あの人は馬鹿だ!」


瑠衣が額に手を当てて天を仰ぎ始めた。


「何がよ!」


思わず声を荒げてしまう。


「みんなみんなみんな愛だ恋だって!私の知らないことばかり!!」


瑠衣の肩を揺さぶる。

行き場のない感情が胸の中で頭をもたげた。

その感情は、激しく、醜く、制御できるものではなかった。


「分らない分からない分からない!!!好きって何!?私には理解できないよ!!私はどうしたらいいの!?ねえ!!」


悲痛な叫び声が部屋に響き渡る。

廊下に漏れるとかそんなこと考えられなかった。

どうにも腹が立ってしょうがない。

大体蓮が恋の盲目でおかしくなってからそうだった。

私だけが置いてけぼりだ。

私のことを「魔性の女」と言って目配せし合っていた蓮とゆっこを思い出す。

私には理解ができなかった。

瑠衣の赤く染まった頬が私の心に入れたヒビ。

瑠衣と蓮が付き合った?

どういうことなの、私はまた置いてけぼり。分からない。

竜司くんが私の耳元で囁いた言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。

理不尽な怒りが体から奔り出る。


「なんでこんなにも辛いの?ねえ、苦しいんだよ!竜司くんの言葉が頭から離れないんだよ!」


瑠衣の肩を掴んだまま脱力して、彼の胸に顔を埋めて叫ぶ。