傷痕に咲く 〜パティシエ総長と歪な少女〜


時が止まった。

…少なくとも、私の中の時計は完全に一時停止した。

理解が追いつかなかった。


「………は?」


やっとのことで絞り出した声は、想像のできないほど低く冷たく硬い声だった。


「実は、昨日流れで付き合うことになって。」


しかし瑠衣はそれに気づかない。

嬉々として蓮との関係を語り出した。


「ちょ、ちょっと待って。」


慌てて瑠衣に掴み掛かる。

瑠衣が口をつぐんだ。


「ねえ、それ、どういうこと?」

「…?言葉のまんまさ。」

「付き合うって、その、恋人ってこと?」

「ああ、もちろんそうだが。」


目の前が真っ暗になった。

分かった気がした、さっき瑠衣が言っていたことが。


「それが…つまり、蓮が、瑠衣の言う特別な『大事』ってこと?」


瑠衣が頬を赤らめた。

図星だ。


「そっかぁ、ははは、なるほどね。」


脱力してベッドに倒れ込んだ。


「ねえ瑠衣、じゃあ竜司くんから私への『大事』もそういうこと?『好き』ってそういうこと?」


瑠衣の顔が引き攣った。


「あの人、言ったのか!?」


なんで?

なんでそんなに驚いた顔をするの。


「好きって言われた。好きだから守りたいって。」


瑠衣はわなわなと震える。


「凛、お前、答えたのか?」


再び瑠衣が私の肩を掴む。

二人称が変わっていることに気づいているのだろうか。