次の日、羞恥心が私を襲った。
 昨日は確かに酔っていた。

 けれど酔っていたのなら、記憶ごと消し去って欲しかった……!


 しっかりと昨日の記憶は残っていて、どれほど恭平さんに迷惑をかけたのかが思い出される。
 それに……。

「夢じゃ、ない」

 左手の薬指には、恭平さんがいつもはめている指輪があった。


「どうして恭平さん、こんな大事な指輪を……」

 なんだかイケナイことをしているようで、罪の意識が芽生えてしまう。

 いや、ないないない。
 あの恭平さんがこんな簡単に不倫するなんてありえないって。


『じゃあ、今から俺の奥さん役になってくれる?』

 きっと私が恭平さんの奥様を羨ましがってしまったばかりに、慰めようとしてくれたんだよね?


『本当はもうひと回り小さいサイズがあるんだけど、家にあるから今度持ってくるね。それと交換ってことで』

 もし本当に不倫の誘いだとしたら、絶対に乗ったらダメだぞ私……!

 いやだから恭平さんが不倫だなんてありえないって!
 じゃあなに、もしかして奥様がすでに亡くなられているとか、離婚しているとか……?


「私、恭平さんのこと何も知らないなあ」

 気づけば恭平さんのことばかり考えていて、ハッとする。

 これも恭平さんの罠だったり……⁉︎
 もう元カレのことを考えないように……って?


 恭平さんだってらあり得そうだ。
 きっとあのセリフは私を元気づけるために違いない。