『…そろそろ帰るぞ。』

あたしの席の前に立ったヨウが鞄を押し付けてきた。

退屈そうな目であたしのことを見下ろしている。

待たせてしまっているので、完全にこちらが悪い。

『わかってる!』

そう答えて、机の上に並べていた数冊のノートを通学用のリュックの中にしまった。

授業中に居眠りをしていたせいで、ノートが真っ白のまま授業を終えてしまった。

だから放課後に友達のノートを借りて、写していたんだけど、間に合わなかった。

座席から慌てて立ち上がった。

『あれれれぇ?ミツバちゃん?これから放課後デートですかねぇ?えぇ?』

クラスメイトで友達のモトコちゃんが冷やかしてきた。

あたしの席の隣の座席で何か作業をしていたのに、わざわざ手を止めてこちらを見ている。

『違う…くはないんだけどー!あっ、ごめん!明日にはノート返す!』

『全然いいよぉ。楽しんできてねぇえ。』

ノートを貸してくれた恩人は、ニヤニヤしながら答えた。

そんなモトコちゃんを見て少しだけ照れながらも…。

あたし達は教室を出た。