「や…」



八神さんはあたしを弄ぶようにクスッと笑う。

やり返す…?それって、復讐?



「ねえ、どうする?清水?」



あたしは…復讐なんて……そんなの


ムリ。


あたしは、復讐なんてできない。

いくら正義感だけで動いているあたしでも、そんなの、ムリ。

人を傷つけるなんて…


「む…ムリ!」


あたしは、八神さんの視線から逃れるように顔を逸らす。


八神さんの顔が曇る。


「あんたも、いい根性してるよな、清水愛香。」


根性?

根性じゃない。

あたしは、正義のために、あんたのために、イジメを受けているんだ!


「あたしは、自分の正義感に従って…あんたを助けるために身代わりになっている。…っそれに…あたしにはやり返すなんてこと、できない…」


根性なんかで済ませないでほしい。

あたしは、逃げたり、忘れたり、やり返したりしない。



    ———戦うんだ———



「さようなら。」


あたしは、八神さんに背を向けて神社の階段を駆け降りる。

手遅れになるかもしれないなんて思わなかった。