彩綾があたしの胸ぐらを掴み、顔を近づける



「ななみんがね、見ていたのよ。あんたが先生に手紙を渡すところをね。」




嘘でしょ!?

もっとまずい。

伏見くんの疑いは一瞬で晴れたけど…


「奈々…美…?」


奈々美は後ろの方でそっぽを向いてあたしと目を合わせない。


「みんな、バレエのレッスンに遅れるんだけど?」


呑気な声を出したのは、麗華だった。

その声につられて、みんなが左腕を確認する。


「やっば!あと30分しかないじゃん!」

「早く行こ!」


奈々美も、麗華に手を引かれる。


「ななみんも、今日から一緒だよね!レオタード買ったよね?」

「もち!」


奈々美は、麗華に微笑む。



あたしなど、最初からいなかったかのように、みんな慌ただしく鞄を背負う。

しかし、柑奈が最後に振り向いて、あたしに言った。


「タダで済むと、思うなよ?」


柑奈はあたしの前髪を掴み、思いっきり引っ張ると、みんなに追いつくために走っていった。


残されたあたしは、呆然としていた。

タダじゃ済まない…?

あたしは、これから、何をされるの…?



幸せだった高校生活は、破られる。