視界には、麗華姫の細い脚。

あたし、麗華姫に転ばせられたの?

脚を引っ掛けられて?

視線を上に向けると、麗華姫の笑っている顔があった。



「なんで逃げるのぉ?か・ん・な?」



麗華姫があたしの腕を掴む。

麗華姫の細い指が、あたしの腕に食い込む。

あの、辛い日々がフラッシュバックする。



「や、やめて…!」


麗華姫を振り解こうとして手をひねるが、逆に強く強く握られる。

視界の右には、ななみんが映る。

ななみんの手が、あたしのスカートの右ポケットに…。



「やめてよぉ…!!」



腰を振るが、ななみんはポケットから取り出してしまう。



———銀色の鍵を。



鍵には「体育館倉庫」としっかりと書かれている。

あたしは、もう、泣くことしかできなかった。


終わった。

全てが終わった。


あたしの仮面は剥がされてしまう。

絶望的だった。



そして、あたしをもっと絶望の淵に追い詰めるのは、彩綾。

あたしのポロシャツを捲る。



「これが、あんたの『虐待』の跡ぉ?」



あたしの脇腹には、赤黒いアザ。

それがいくつもいくつも、ついている。



あはは。

もう終わったわ。

最悪。


かりそめのあたしは、全て暴かれた。

もう、みんなの目には、「あたし」は映っていない。

本当に嫌だな…。