あたしは、落ちなかった(・・・・・・)




「……え…?」




あたしは空中で手を掴まれ、静止していた。




「何やってんだよ、バカ!それは復讐のつもりか!?」





あたしの手をしっかりと掴んでいたのは、八神さんだった。



「八神…さん……」




手を引っ張られて屋上に連れ戻される。




「良かった…間に合って。」




八神さんがあたしを抱きしめる。

八神さんの体の温かさを感じた。




「う……ひっく…う…う……」




涙がさらに流れる。




「大丈夫、大丈夫だよ…」





八神さんがあたしの頭を優しい手つきで撫でる。

温かい。

あたしが求めていたもの。

ずっとずっと求めていた。


冷たい狂気の世界で願っていた。


今日、今、伸ばした手を掴んでもらえた。

あたしを引っ張り上げてくれた。




「うあぁぁ……」




八神さんに身を任せて、あたしは泣いた。

憎い…憎い憎い…

あたしをいじめた人が憎い。

アイツらが憎い。




「ねぇ、清水はさ、死んだら復讐になると思ったの?」




あたしは素直に頷いた。




「そんなわけないじゃん。佐野のことを突き落として笑っている奴らだよ。アイツらは、人が死のうがどうでもいいんだ。新しいターゲットを見つけてまた痛ぶるだけ。」



八神さんは淡々と喋る。