麗華と百合香が向かい合う。

どちらも動かない。


その時、ジャマが入った。




「やぁぁぁ!!」



ドンッ!!!



次の瞬間には、百合香の体は宙に浮いていた。


「え…」


百合香の呆然とした顔が何故か鮮明に見えた。

麗華の隣で両手を前に出しているのは、奈々美。




奈々美が、百合香を突き落とした…?





ここまで理解した時、スローモーションのように動いていた景色が戻る。



ドシャッ!ガン!ガン!



百合香の体が階段に打ちつけられながら落ちる。



「百合香……!」




階段の一番下で止まった百合香は、仰向けになって、額から血を流していた。


右手には、しっかりとスマホが握られている。



「あ〜あ。あたしに逆らうから…」




いつもの調子に戻った麗華が髪をいじりながら言う。


奈々美は手を握って下を向いている。




「ななみん!やるじゃん!思い切ったことするね〜!」




みんなが奈々美の肩を叩いて笑い合う。

麗華が階段を降りる。


そして、百合香の右手—スマホを握っている手を蹴った。

百合香の手からスマホが飛ぶ。



———バキィ!!



麗華が、そのスマホを踏みつける。

画面が粉々に割れ、中から何かの部品が飛び出したスマホ。