「詩織ちゃん、これどうする?」

「あぁ、これはあっちに」

「詩織ー!これできない!」

「私がやっておくよ」


文化祭の準備中___……。


教室内はとっくに文化祭ムードのテンションだ。


そんな中でもテキパキと準備を進めなきゃいけないもの。


特に、学級委員長の私は。


さっきから「あれがわからない」だの、「これおしえて」だの。


引っ張りだこの状態だ。


しょうがないか、1週間後に迫っている文化祭が終わるまでの辛抱だもの。


誰にも聞こえないようにため息をつくと、私は黙々と作業を続けた。


________________________________



《完全下校時刻になりました。校内に残っているみなさんは、速やかに下校をしてください》


毎日19時に流れる、校内放送でハッと我にかえった。


本当だ、もうこんな時間……。


外を見ると案の定、真っ暗。


準備物に夢中になるあまり、時間の進み具合なんて全然気にしてなかった……。


なんとか仕上げたクラス看板を踏まないように、空いたスペースに寝転ぶ。


「誰もいない教室……か。……なんだか新鮮ね」


「___俺もいるけどね」


1人でボソッと呟いたつもりだった。


誰もいないと思い込んでポロリとこぼした言葉だったのに。


___まさか人がいたなんて。


慌てて起き上がって、声の主の方向を向く。


「……あぁ、降谷くんか」


「なにその残念そうな声。どーも、降谷くんです」


リュックを机に置いたまま自分の席に座っていた彼___降谷玲弥。


クラスの中では中心的な人物で、男女問わず人気者……。