ある夏の夜、サチはベランダでビール片手に星の見えない夜空を眺めていた。
金曜日の夜に予定も無く一人で晩酌とか、嫌いではないけれど寂しい女だなと思う。
同棲していた彼氏と別れて丁度三ヶ月。
そろそろ次の恋に向かっても良い頃かと思い、部屋に残っていた元カレの私物を整理したところだった。
今日まとめたものを明日捨ててしまえば、スッキリする。
別に未練があったわけじゃ無いけれど、自然消滅に近かったからモヤモヤとしたものが胸に残っていた。
部署が変わり、出張する事が多くなった元カレ。
離れている間の時間と距離は、そのままサチ達の心の距離になってしまった。
お互いに何故自分達は付き合っているのだろうかとわからなくなった頃、元カレがポツリと告げた。
「……別れようか」
と。
サチの心にも彼の居場所はほとんどなく、もはやただの同居人となっていた。
別れるのはむしろ自然な流れだったのだと思う。
荷物も整理した。
元々未練もない。
だから、こうして感傷に浸るような真似も今夜で最後。
ぐっと喉をさらして残りのビールを飲み干して、もう一本開けようかと思ったときだった。
「わわわ! ごめんどいて!」
「は?」
突然の声に上を見ると、男の人らしい人影。
心の中でも『は?』となり、とっさに避けようとして失敗した。
「いったた……」
「ってー……って、ごめん。大丈夫?」
上半身裸の男はすぐに退いてくれたけれど……。
「大丈夫だけど……あんた誰?」
「……」
一瞬黙り込んだ男は茶色の目をぐるりと回してニッコリ。
「天使です」
「天界にお帰り下さい」
明らかな嘘にサチは真顔で真っ黒な空を指差した。
金曜日の夜に予定も無く一人で晩酌とか、嫌いではないけれど寂しい女だなと思う。
同棲していた彼氏と別れて丁度三ヶ月。
そろそろ次の恋に向かっても良い頃かと思い、部屋に残っていた元カレの私物を整理したところだった。
今日まとめたものを明日捨ててしまえば、スッキリする。
別に未練があったわけじゃ無いけれど、自然消滅に近かったからモヤモヤとしたものが胸に残っていた。
部署が変わり、出張する事が多くなった元カレ。
離れている間の時間と距離は、そのままサチ達の心の距離になってしまった。
お互いに何故自分達は付き合っているのだろうかとわからなくなった頃、元カレがポツリと告げた。
「……別れようか」
と。
サチの心にも彼の居場所はほとんどなく、もはやただの同居人となっていた。
別れるのはむしろ自然な流れだったのだと思う。
荷物も整理した。
元々未練もない。
だから、こうして感傷に浸るような真似も今夜で最後。
ぐっと喉をさらして残りのビールを飲み干して、もう一本開けようかと思ったときだった。
「わわわ! ごめんどいて!」
「は?」
突然の声に上を見ると、男の人らしい人影。
心の中でも『は?』となり、とっさに避けようとして失敗した。
「いったた……」
「ってー……って、ごめん。大丈夫?」
上半身裸の男はすぐに退いてくれたけれど……。
「大丈夫だけど……あんた誰?」
「……」
一瞬黙り込んだ男は茶色の目をぐるりと回してニッコリ。
「天使です」
「天界にお帰り下さい」
明らかな嘘にサチは真顔で真っ黒な空を指差した。