眠れなくてベッドの中で寝返りを繰り返す。
目を閉じると、鮮明に思い出すのは昼間のこと。
髪を撫でる手の優しさ。
抱きしめられた腕の強かさ。
受け止めてくれた胸の温かさ。
私を射抜く瞳の切なさ。
そしてなにより、唇の端に触れた熱に。
リアルな感触が蘇って、恥ずかしさに全身が沸騰したように熱くなる。
それを自然と受け入れようとしていたあの時の自分が信じられない。
そのまま唇の上に落ちると思っていた熱は、直前でそれにほど近い肌の上に落とされた。
(これは…、キス、とは言わないよね?)
そっと手を触れる。
まだそこに残っている熱りが、私の中で燻っている。