「なにやってんだ、輝!早く追いかけろ!」


呆然と小峰さんを雑踏に見送る俺の背中に、陽介が怒鳴りつける。

それに、は、と我に返る。


「…は、…ちょっとなに言っ、」

「いいから、行け!早く!あとは任せろ!」

「ちょっと、輝!」


陽介のあと押しで俺は走り出した。

村上の甲高い声が俺を引き止めようと響くけど、もう彼女のことしか考えられない俺にはなんの効力もない。



人混みをかき分けて先へ急ぐ。

見逃さないよう注意を払うけれど、人の多さから思うように足が進まない。

早く見つけたいのに苛立ちが募る。


焦るな。落ち着け。


まだそう遠くへは行っていないはず。

祭りは今からという時に、会場外へ向かう人の流れはそんなに多くはない。

人が薄くなれば自ずと見つかるはずだ。