朝の落ち着きのない教室は、一番危険な時間帯だ。
登校してきたばかりの生徒たちが廊下を行き交い、教室は人の出入りが最も激しい。
そんな喧騒には、紛れようと思えばいくらでも紛れることができるのだ。
「結衣ちゃんおはよう。昨日ね、あい子とアイス食べて帰ったんだよ」
「おはよう。そうなの?いいなぁ、うちらも誘ってよ」
「だって結衣ちゃんたちもう帰ってたじゃん。あい子がね、ご馳走してくれたんだよ」
「えー、あい子気前いいじゃん。どこのアイス?」
「駅前。グリコとね、校門までダッシュと、しりとりで私が2勝したから奢ってくれたの」
「なにそれ。意外と子供みたいなことするんだね、さくら」
「私はヨーグルトので、あい子はクリームチーズのを食べたの。結衣ちゃんも食べたことある?」
「あるよ。どっちも美味しいよねー。私はチョコのクッキーとかナッツとか入ってるのが一番好き」
「チョコも美味しいよね、私も好き」
朝から結衣ちゃんを捕まえると、特に聞かれてもいないのに昨日のことを延々と話す。
結衣ちゃんは昨日の私をどう思っているのか、私の話に普通につきあってくれる。