「貴方が思ってるほど世の中甘くない。貴方の身勝手で予定をずらしたらジュンにも迷惑がかかるでしょ」



冴木さんは俺達の専属マネージャーであるが、人生の先輩でもある。
厳しい世の中を俺らよりも長く経験してる分、頗る意見は正しい。



「俺にだってちゃんとわかってるけど…」
「恋愛するなら歌手として立派に成功してからにしなさい。今はそのタイミングじゃない」



冴木は諦めが悪いセイに言いたい事だけ伝えると、スタジオの方へと足を向かわせ、扉の入り口に立っていたジュンの横を通り過ぎた。



単独撮影をしていたジュンだったが、撮影から戻った途端、楽屋で口論をする2人の異変に気付き、聞き耳を立てていた。



「セイ……。冴木さんと何かあった?さっき、喧嘩してただろ」

「あ…、いや」



部屋に入り心配そうに見つめるジュンに対してセイは口を濁して首を横に振った。