しかし、紗南の存在などとうに気付いてる冴木は、セイの甘えた考え方にカッと頭に血が上った。



「……それが、留学日程を先延ばしにしたい理由なの?」



セイは唇をかみ締め無言でコクリと頷く。



「貴方を放置し過ぎたわ」

「えっ……」


「先日貴方達に留学話をした際に身辺整理をしなさいって言ったばかりじゃない。もう二度と訪れないチャンスかもしれないのよ。一時の恋沙汰よりも現実に目を向けてちょうだい」


「冴木さん」



想像以上に厳しい口調にハッと顔を見上げると、身を震わせる冴木を見て逆鱗に触れている事に気付いた。



冴木は今回のプロジェクトを成功させる為に半年前から慎重に準備してきたにも関わらず、紗南という存在がセイの足かせになっていると知ると、気持ちが逆撫でされた。