「ひょっとして、今すぐアメリカに行けないない理由でもあるの?」

「……」



セイは正解だからこそ重い口が開かない。



「特別な理由があるなら正直に話してみて。最後まで聞いてあげるから」



冴木は視線を落として口を噤むセイに対して口調を改めた。






冴木さんとは毎日顔を合わせているという事もあって、まるで本物の家族のように絶大な信頼を寄せている。

時に意見が食い違い激しく衝突し合ったりもしたけど、最終的には母親のようにいつも味方でいてくれた。

だからこそ、今の心境を語る気になった。



「俺、いま大事な人がいるんだ」

「大事な…人」



冴木の頭の中には、先日話をした紗南の顔が思い浮かぶ。



「彼女は幼い頃からずっと好きだった人。でも、仕事がバタバタしていて彼女には留学日程が前倒しになった事を伝えてなくて…。それに、俺がまだ未熟だからあと少しだけあいつの傍に居たくて」



セイは大事な人の存在が心残りだと素直に吐露した。