「頭金の内訳は、ダンスレッスンの頭金、ピアノ教室のレッスン代、語学学校の入学金と授業料、滞在先のアパートの家賃と敷金、飛行機の片道チケット代よ。その後に諸々発生する資金に関しては、後日少しずつ納入していくつもり」


「別に留学を辞めたいって言ってる訳じゃない。ただ、俺の出発を1カ月だけ先延ばしに…」
「それじゃあ、納入済みの頭金を事務所に払って、今すぐ芸能界を引退しなさい」


「芸能界を引退?俺はただ出発日を先伸ばしにして欲しいって言ってるだけで…」
「返答に半年待ってようやく漕ぎつけた大事な契約なの。貴方の一方的な都合で予定を左右させられない」



冴木は甘えが残るセイにピシャリと一喝し、厳しい現実を知らしめる。



セイは悔しくて納得出来ない。
だが、冴木の言い分もよくわかっている。


すると、冴木は力が抜けたようにフゥとため息を1つ。



「ねぇ、よく考えて。貴方は自分の意思で留学を決意したのよ。我々が無理強いした訳じゃない」

「確かに冴木さんの言う通りだし、留学はしたいけど…」


「今回の留学プロジェクトは、会社全体でサポートしてるの。それに、ファンやスポンサーまでも貴方達の将来の活躍に期待してくれているわ」

「わかってる。でも、いま自分の気持ちが留学一色に染まっていなくて」



セイはいま留学に乗り気ではない事を匂わせると、冴木はセイが心変わりしてしまった原因に気が止まった。