セイの胸中が明かされると、冴木はもたれていた壁から離れてセイの隣に立った。
そして、険しい顔つきへと表情が一変。



「今さら何言ってるの?貴方の個人的な都合で日程を先延ばしに出来ると思う?もう出発の何日前だと思っているの?マスコミを通じて世間にも大々的に発表したの」



冴木は眉を釣りあげてお冠状態に。
セイは態度が豹変した冴木の威圧感に口を閉ざす。





冴木さんの言ってる事は正しい。
きっとマネージャーが冴木さんじゃなくても、同じく厳しい返答がなされているだろう。



でも、今の心理状態じゃ成功は見込めない。
日本に心配事を残さずに晴れ晴れとした気分でアメリカに向かいたいというのが本音だ。

だから、無理は承知だが彼女の力を借りたかった。



「わかってる。でも、少しでも日程に融通が利くのならと思っ…」
「手続きはとっくに終えたの」


「1カ月後には必ずアメリカに向かうと約束するから…」
「留学費用の頭金600万円は既に納入済みなの。貴方の自己都合で今さら出発日を変更出来ない」



鬼の形相で語る冴木は、軌道修正しながらも想いを伝え続けるセイの意見を蹴散らすように叱咤した。



留学の件で目一杯になっているのはセイだけじゃない。
冴木も一緒。
KGKの将来を思い、今日まで着々と準備を進めてきたのだから。