セイとジュンは、授業終了後に迎えに来た冴木と一緒にタクシーに乗って学校を後にした。



今日は午前11時半からベストアルバムのジャケット撮影。
留学を機に急遽発売が決定したベストアルバムは、2人が歌手活動を始めてから3年間の集大成にあたる。

音源の原盤が残されている為、レコーディングは行わないが、新規にジャケット撮影だけは行われる事になった。







撮影拘束時間は約2時間。

昼食は撮影後。
15時から音楽番組の収録。
そこでメディアを通じて留学前の挨拶を行う。
収録合間の30分程度の休憩時間は、女性誌のインタビュー。

仕事三昧の過密スケジュールは、今日もひと息つく間もなく続いている。




セイは日々重なっていく問題にストレスを抱えていた。
バタバタと仕事をこなしている間にも、紗南が自分から遠ざかっているような気がしてならない。






ジュンが単独で撮影している間、セイは冴木と2人きりの楽屋でドレッサーの回転椅子に座ったまま小さく肩を落とした。

鏡を囲むように設置されている10個の電球は、セイの茶髪を明るく照らす。



「冴木さん…」

「ん、どうしたの?」


「俺…、留学の出発日を少しだけ先に伸ばしてもいいかな」



呟くように伝えた本音は、堂々とステージに立つ姿とはまるで別人のように粛々した態度に。