万が一、彼女達の手紙が校内で紛失してしまう事があったら、学校どころか世間に知れ渡ってしまう可能性がある。
小さなミスがタレント生命の命取りになる可能性も。

だから、手紙を落とさぬように制服の内ポケットにしまった。




返事をするつもりはないし、冷たい人間だと思われても仕方ない。
俺には紗南という恋人がいるし、丁寧に断る時間もない。


1時間目を終えたら、迎えに来る予定の冴木さんにこの手紙を渡して処分してもらうつもりだ。


このように、手紙の処分1つで第三者に頼るしかない現状だ。






すると、着席したままのセイの耳に偉そうに喋る男のある会話が届く。



「ついこの前、俺の兄貴が西門前で女と抱き合ってんの。俺が青蘭に通ってるのを知りながら、人目を憚らずに堂々とやらかしてくれるよな。しかも、相手は普通科の女」



セイは『西門で女と抱き合っている』『相手の女は普通科』というキーワードに、ふと気が止まった。
自身のタイムリーな悩みと類似している。