紗南はいてもたってもいられなくなり、食事を口にせぬまま席を離れた。
顔色が悪い娘を心配した母親は、心配の眼差しで背中を追う。
「紗南、朝ごはんは?」
「ごめん、後で食べる」
階段を駆け上がりながら背中で母親にそう伝えた。
リズミカルに叩きつける足音が耳に入らないほど、渡米日の事で頭がいっぱいに。
部屋に到着すると、ベッドの上に置きっ放しにしていたスマホを鷲掴み。
混乱した状態で震えた指先を叩きつけるようにセイにSNSメッセージを打つ。
『留学は1週間後になったの?』
たった一行だけの短いSNSメッセージに全ての問いを詰め込んだ。
長文は彼の負担になるから。
送信後…。
10分間、ベッドの上でスマホ画面をじっと見つめたまま返信を待った。
でも、返信どころか既読マークすらつかない。
過去の経験を踏まえると、返信してくれるかどうかも不明だ。