ーーバイク接触未遂事件があった日の翌朝。
スマホのアラーム音で目が覚めた紗南は、枕元のスマホを取ってホームボタンを押すと、セイからSNSメッセージが届いていた。
嬉しさのあまり、思わずベッドから飛び起き、3秒前までの眠気が一気に吹っ飛ぶ。
しかも、今日はいつもみたく約束時間の数字ではない。
交際をスタートしてから初めて文字というものが届けられた。
嬉しさに拍車がかかる。
『おやすみ』
内容はたった一行。
絵文字やスタンプなど使用されていないシンプルなもの。
送信時刻は午前4:23。
当然その時刻はまだ夢の中。
紗南はバイク接触未遂事件をセイに伝えていない。
自分の事で余計な心配をかけたくないと思っていたから。
普段からは考えられないようなメッセージを受け取ってバカみたいに喜んだのも束の間。
少しひっかかるものも感じた。
初めて送信された文字コミュニケーションは、それほど特別なものだったから。
