我慢
忍耐
そして、苦渋の決断
この3つは、デビューしてから今日まで自分が背負ってるもの。
腹わたが煮え滾る感情も、今の立場上心を鬼にして抑え込むしかない。
セイは未だに伝えていない留学日程の件を胸に留めつつも、新たに浮上した問題に再び頭を抱えた。
「ああ゛ぁぁあっ〜〜〜〜っ!」
思わず悲痛な叫びが溢れる。
タクシーに同乗している冴木は、助手席から後部座席に座るセイの方へと振り返り、その隣に座るジュンはセイの方を向き目を見開いた。
セイの感情スイッチは紗南。
乱れ狂った感情は、一気に崖っぷちへと追い込まれていく。
「セイ……?いきなり叫び出してどうしたんだよ」
ジュンはセイの叫びに驚愕した。
一方のセイは、頭を抱えて前屈みになり助手席のシート裏になだれ込む。
どうした事か…。
まるでモノクロ写真のように目に焼き付けられた光景は、空から無数の槍が降り注いで来たかのように胸に突き刺さっていく。
でも、そんな俺が辛くても何とか乗り切れたのは…。
『私っっ……。セイくんに絶対心配なんてさせない。この先も……、ずっと…ずっと……』
先日、目を見て直接伝えてくれた紗南のあのひと言があったから。
信じる力は制御となり。
進むべき正しい道のりを指し示してくれる。