セイは午前中の仕事を終え、夕方から夜にかけて行われる補習授業に参加するつもりで登校した。




ところが、乗車するタクシーが一車線道路から西門へと左折した、その時。
車内の窓から白昼堂々と2人が抱き合っている現場を偶然にも目撃。


タクシーが紗南達の脇を横切っていく間、同乗している冴木とジュンの存在を忘れてしまったかのように窓に両手を張り付かせた。



「⋯⋯⋯っ!」



沸々と湧き上がる嫉妬心は、火の粉が舞い散りそうなほど熱く燃え盛る。





建前の理性なんて取っ払って、人間らしく感情をむき出しに出来たら。
思いのままに行動に移せたら…。

今すぐタクシーの扉を開けて、紗南達の元へと全力で走って行くだろう。





『俺の女に何してんだよ。離れろ!』と、感情を露わに怒鳴り声を上げて。

胸ぐらを掴んで、『もう二度と紗南の前に現れるな』と、彼女に手を触れぬよう警告してやりたかった。







でも…。

悔しい事に。
残念な事に……。


今の立場上、人前で本音と感情を曝け出す事が出来ない。