ううん……。
やっぱりそれはダメ。
ひとり娘の私が留学で2年間も家を空けたら、きっと両親は寂しがる。
特に父親は私を溺愛しているから、留学したいだなんて言ったら反対するだろうな。
それに、留学理由が好きな人を追いかける為になんて知られたら、立腹どころか勘当されちゃうかも。
よく考えたら、彼は日本にいるよりもアメリカに留学した方が、自由な時間が持てるのかな。
時間に拘束されてなかなか連絡が出来ない今とは違って、少しは時間に余裕が出来るのかもしれない。
週1度の限られた時間しか会えず、忙しくてメッセージや電話が繋がらない今と。
留学して今よりも時間が生まれて、メッセージや電話が繋がるけど、遠くて簡単に会えなくなってしまう未来。
一体、どっちの方が幸せなんだろう。
やっぱり⋯、週1度でも何とか都合をつけて会えてる今の方が、会えない未来よりも断然幸せなのかな。
嫌だよ……。
『誰よりも応援してるから頑張って!』なんて強がりを言ってしまったけど、本当はアメリカになんて行って欲しくない。
ずっとずっと、傍にいて欲しいよ。
自身の幸せな時間と引き換えになる、彼の将来。
夢を追い求める彼を想って留学を応援したが、覚悟が追い付いて来ない。
街の看板やポスター。
それにテレビ業界からKGKが完全に姿を消した未来を想像しているうちに悲しくなり、手元のノートへとポツポツ涙の雨が降り注いだ。
紗南は留学の日程が変更になった件を、まだセイから知らされていない。
だから、セイが日本にいる残り1ヶ月間で、恋人として自分には何が出来るのかと少しずつ考え始めていたところだった。