「……お願いします」



総合的に考えてプラス方向に気持ちが動くと、セイはジュンと同じ位置まで深く頭を下げた。

2人の強い意志は真っ直ぐに冴木へと届けられる。



「わかった。すぐ事務手続きに入るわね」

「はい」



冴木はぐるりと体勢を前方に戻し、手元のスマホで事務所に報告メールを打ち始めた。



しかし、セイがCMの絵コンテに目を通し、ジュンがポケットからスマホを出して操作し始めたその時、冴木は背中を向けたまま話を続けた。



「今日から少しずつ荷造りを始めなさい。……それと、最低限の身辺整理はしておきなさい。今回の留学は貴方達の歌手生命がかかっているから」



冴木はセイに向けて遠回しに紗南と縁を切れという意味合いのつもりで伝えた。


冴木の意図が掴めないセイは首を傾げる。

だが、直感が働いたジュンは、冴木がセイだけに向けたメッセージだとすぐにわかった。