「ありがとう」



セイは紗南の理解にホッと胸をなで下ろす。



「それにアメリカと言っても飛行機でひとっ飛びで行けるから、会いたくなったら貯金を崩して会いに行くね」

「マジ?お前は泣き虫だし頼りないところがあるけど、飛行機とか1人で乗れんの?」


「えへへ…。まだ1人で飛行機に乗った事がないからわかんない。でも、いざとなったら何とかなりそうな気がする」



キーン コーン カーン コーン



話の途中でチャイムが鳴る。
2人は別れの時間と察すると、自然と会話が途切れた。




一方、長らく不在のフリして様子を見守っていた養護教諭だが、聞き耳を立てていた事がバレないようにと、チャイム音に紛れさせて足音をかき消し、恰もいま保健室に現れたかのように扉を大きく開けた。



「……さ、2人とも。3時間目の授業が終わったから、そろそろ自分達の教室に帰りなさい。だいぶ体調が回復したでしょ」



こんな自分は非常にカッコ悪いが、自ら生み出した危機的状況から脱するには、こうする他ない。



「はーい」
「ほーい」



素直に了承した2人が時間差で教室に戻っていくと、フーッと深いため息をつき机に腰をかけた。



「ただですら恋愛が難しい状況なのに、セイはもうすぐで留学かぁ。…恋は前途多難のようね」



運命のイタズラにより2人が離れ離れになる事を知ると、恋の行方が心配になった。