飴袋を破いた後、コロンと小さな音を立ててセイの口の中に転がる。


星型の飴は勇気の飴。


その勇気の飴が、セイの口の中にじんわり染み渡っていくと、数日前に冴木から伝えられた留学の話を伝える準備が整った。



「実は俺、来月からアメリカに留学する事が決まった」

「えっ⋯⋯」



紗南は衝撃的な事実に思わず耳を疑った。



聞き間違え?
それとも冗談?



現実が受け入れ難く、留学という2文字がすんなり耳に入っていかない。
セイは伝えなきゃいけない言葉を喉の奥に引っかからせながらも話を続けた。



「期間は約2年。内容は語学にダンス。幼少期から習っていたピアノも、向こうで再び習うつもり。俺、歌手として軌道に乗り始めてから学びたい事が沢山生まれて、半年前に留学を希望してたんだ。今回、昔から憧れだった人がダンス講師を務めてくれる事になったから、留学してより一層ダンスに磨きをかけて来ようと思ってる」

「…留学か。凄いね」



何処か他人事のように思えてしまった。
でも、彼が日本から離れて行く姿を想像したら⋯⋯。