「ねぇ、セイくん。芸能界ってどんなところなの?楽しい?それとも厳しいの?」
「んー、両方かな。ステージで歌ってる時や、ファンから熱い声援を受けた時は最高に幸せだな~って思ってる。でも、上下関係が厳しいし、見えないところで複雑な事情が絡んでいたりもするから、どっちもどっちかな」
「私は芸能界を知らないから、客観的に見た世界しかわからないんだ。でも、きっとセイくんの周りにはモデルや女優さんとか、綺麗な女性が沢山集まってくるんだろうな……。私なんて童顔で奥二重だし、何の特徴もないし。芸能人のライバルが現れたら張り合えないな……、なんてね」
紗南は自分の風貌や容姿に自信がない。
だから、一見煌びやかに見える芸能界に身を置くセイが、いつ自分の元から離れていってしまうかが不安で仕方ない。
すると、セイはカーテンの向こう側からクスッと笑った。
「……何、最初からいきなり他の女の話?」
「あはは。自分でもよくわかんない。自分が誰にヤキモチを妬いているのかさえ。セイくんがどんな日常生活を送っているのかわからないから、ちょっと卑屈っぽくなっちゃっているだけかも。……全然気にしないで」
話したい事をコンパクトに詰め込みすぎて、正直自分が何を伝えたいのかわからない。
ただ、会えない時間は孤独で寂しくて。
嫌な妄想ばかりが膨らむ。
2枚のカーテンを挟んでいる2人の間には10秒ほどの長い沈黙が続いた。