「あ……、えっ?っあ……」
紗南は動揺するあまり怪しげな吃り声に加え目を逸らす。
親友として素直に伝えるべきなのだろうか。
それとも、彼を思って誤魔化すべきか…。
恋の小さな発展だが誰にも言えない。
それが秘密の恋というもの。
ちなみに、彼との交際をカミングアウトしたのは菜乃花だけ。
本当は親友でも交際を内緒にしておくのがベストだと思うけど、彼と出会った当初からちょくちょく報告していたし、菜乃花の事を親友として一番に信用しているから。
「何よーっ、勿体ぶらないで早く教えて。聞きたい、聞きたい、聞きたい!」
「あの…、ここじゃちょっと……」
「まさか……!」
菜乃花はハッと目を見開いて妄想を膨らませると、キスを連想させるように唇を窄ませた。
「チューしたんでしょ。チュー」
「バババ……バカぁ!お昼時にこんなところで何やってんのよ。そんな訳ないでしょ」
紗南は菜乃花の両肩に手を置き、目を覚ませと言わんばかりにグラグラと身体を大きく揺さぶった。