ーーあれは、数ヶ月前の放課後


セイくんが履いている★マークの上履きをあてにして、芸能科のクラスを調べに行く為に(菜乃花はハルくん目的)、菜乃花と2人で紺のブレザーを脱いで西門から芸能科がある西校舎の下駄箱に侵入した事があった。


外の風が冷たかったから、ワイシャツ一枚じゃ寒くて風邪を引くかと思った。
でも、それ以上に彼のクラスを知りたかった。


ちなみに、その日は校舎内にいたのか彼の上履きは見つからなかった。



本来、上履きに書かなければならない名前の代わりセイくんが★マークを書いてるのは、盗難防止の為。
芸能人同士でも売れてる子の人気を妬んで、私物を盗みネット販売をする人もいるとか。



ちなみに菜乃花はハルくんのマークを知らぬまま侵入を試みるなんて無謀すぎる。



「今日は彼に会えていい事もあったけど、嫌な事も抱き合わせでね」



紗南は冷然とした冴木の顔を思い浮かべて深いため息をつく。



ところが、芸能関係絡みなら何でも知りたがりな菜乃花は、ボソリと呟いた紗南のひと言が引っかかり興味津々に目を光らせた。



「いい事も嫌な事もあったの?…どんな、どんな?両方聞きたいから、まず手始めにいい事から先に聞いちゃおっかなぁ〜」



菜乃花はお弁当のハンバーグを箸で突っつき、いやらしい目つきで先に美味しい情報から引き出そうとしていた。



しかし、つい口を滑らせてしまったそのいい事とは、保健室の1つのベッドの中でセイの胸の中で抱きしめられた事。

紗南はあの時の感触を思い返すだけでもカアッと赤面に。