ところが、接近してきたセイの唇が紗南の唇の5センチ手前に届いた瞬間。
ガラッ……
突然、保健室の扉が全開に。
「おっふたりさーん。二度目の運命的な再会を果たしたぁ?おめでと…っとぉ」
再会の席を置く為に長らく席を外していた養護教諭は、テンションが高い状態でおぼんに乗せた温かいお茶3つとレジ袋に入ってるお菓子を持って現れた。
その瞬間、あとたった2センチで届いはずの唇は、不意打ちを食らったせいで60センチも遠く飛ぶように離れた。
2人は一瞬にして赤面状態に。
「いっ……!」
「!!」
セイは白い歯をむき出しにてベッドに座ったまま身体を仰け反らせ。
即座に姿勢良く起立した紗南は、りんご色に染めたほっぺのまま手で口を覆う。
養護教諭と目が合った瞬間、保健室内はシーンと静まり返る。
3人の間に気まずい空気が流れた事は、言うまでもない。
養護教諭の予想では、2人は感動の再会に明け暮れていると思った。
だから、しんみりした空気を打ち破ろうと、明るく登場すると決めていたのだが…。
予想外のキス現場に遭遇すると、かなり驚いてしまったが、2人が上手くいった事を確信した。
養護教諭は自然と口元がニヤける。
「あ〜ら、お邪魔だったかしら?」
意地悪の1つも言いたくなるほど、2人はウブに照れ臭さを見せる。
「ぜっ…全然…邪魔じゃ…ないっす……」
「あっ…たかいお茶……、早く飲みたいなぁ~」
2人は動揺の色を隠せず、しどろもどろな返答に。
恥ずかしくてお互いの顔を見合わせる余裕などない。
白銀の世界に包まれる中、ひと気が無く静寂に包まれている廊下には、保健室からの明るく賑やかな声が漏れていく。
こうして、私達の2年越しのラブストーリーは、一度目に再会した保健室にて再び始まりを迎えた。
セイくんとは2年振りに恋人関係に戻り、勢いに任せて同棲を決意したけど……。
「キスの続きをしたければいつでも席を外すから遠慮なく言ってね」
「杉田先生っっ!」
「……じゃあ、折角だからお願いしちゃおっかな」
「セイくんってばぁ!」
「あはは……」
私達のプラトニックな関係は、想像以上に長引く予感がしてなりません。
【完】